「先生!それを特許と言われても・・・?」

さて、昨日も取り上げた堀江メールの件だが、別のアングルからの別の問題が上がっていたようなので、ちょっと見てみる。やじうまWatchの2006/02/24付けの記事に「■ 苫米地英人さんがホリエモンメールに対し「わたしの知財」と主張」と言うエントリがある。リンク先を見てみると

メールの最後に、彼の著書の宣伝とURLのパス部が最後の署名部分に入っているという話だった。おっと、メールの署名に広告を入れるというのは、大分前から特許を出している私の知財だし、色々本とかにも書かれていることなのだけど。

と言うエントリがあるわけだ。ぬあ?マジでか?俺は署名欄がごちゃごちゃするのはいやだからそんなことはしてないけど、うちの会社の一部の愛社精神がある人たちはガンガンに広告を入れているぞ?もし、この特許が侵害だというのであれば、その人たちに警告しなきゃ。ってことで、特許庁のDBをちょっくら検索してみた。おそらく該当するのは「電子メイル署名添付広告配信システム」もしくはやじうまWatchでも指摘している「電子メール署名を用いたプログラム配信システム」のいずれかと思われる。
で、両方を確認した結果私は安心した。なんだ、全然特許侵害でもなんでもないんじゃん。と。その理由を確認するためにそれぞれの主要部分を引用し、確認してみよう。まずは「電子メイル署名添付広告配信システム」から。

【公開番号】 特許公開2002−175249
【公開日】 平成14年6月21日(2002.6.21)
【発明の名称】 電子メイル署名添付広告配信システム
【審査請求】 未請求
【請求項の数】 1
【出願番号】 特許出願2000−403867
【出願日】平成12年12月6日(2000.12.6)
【氏名】 苫米地 英人

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【要約】
【課題】電子メイルユーザの署名欄に広告を配することにより、電子メイルユーザの配信先となる全ての電子メイルユーザに広告を配信することが可能となるため、広告主から見れば自動的に不特定多数の電子メイルユーザに広告を配信する事が可能となる。
【解決手段】電子メイルユーザの広告情報手段を挿入した電子メイルの送信数と送信電子メイル中の広告閲覧数を受信者が閲覧した数をカウントする送信・閲覧数カウント手段と、送信・閲覧数カウント手段を用いてカウントされた広告の送信数と受信者の閲覧数とにより広告掲載料を算出する広告掲載料算出手段と、広告掲載料算出手段によって算出した代金を広告主に請求すると共に電子メイルユーザに支払う広告掲載料精算手段を有することを特徴とする電子メイル署名添付広告配信システム。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】 HTML文書の送受信が可能かつ電子署名自動添付機能を有する電子メイルシステムにおいて、電子メイルユーザの電子署名に必要な氏名・住所・連絡先などを入力するユーザ個人情報入力手段と、広告主が掲載すべき広告と広告配信数や広告閲覧に対する対価情報を入力する広告登録手段と広告情報送信運営者が広告情報内容の自由に広告内容を制御できる広告情報手段と、ユーザ個人情報入力手段において入力された情報を基に広告情報手段を挿入した電子署名ファイルを作成する電子署名作成手段とを有し、電子署名作成手段で作成された電子署名を電子メイルユーザが電子メイルシステムシステムに登録することで電子メイルユーザが電子メイルを送信するたびに電子署名作成手段で作成された電子署名が送信されることを利用し、電子メイルユーザの広告情報手段を挿入した電子メイルの送信数と送信電子メイル中の広告閲覧数を受信者が閲覧した数をカウントする送信・閲覧数カウント手段と、送信・閲覧数カウント手段を用いてカウントされた広告の送信数と受信者の閲覧数とにより広告掲載料を算出する広告掲載料算出手段と、広告掲載料算出手段によって算出した代金を広告主に請求すると共に電子メイルユーザに支払う広告掲載料精算手段を有することを特徴とする電子メイル署名添付広告配信システム。

次に「電子メール署名を用いたプログラム配信システム」について

【公開番号】 特許公開2002−215532
【公開日】 平成14年8月2日(2002.8.2)
【発明の名称】 電子メール署名を用いたプログラム配信システム
【審査請求】 未請求
【請求項の数】 1
【出願日】 平成13年1月18日(2001.1.18)
【氏名】 苫米地 英人

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【要約】
【課題】 電子メールユーザの署名欄に情報提供やサービス提供の手段を配することにより、電子メールユーザの配信先となる全ての電子メールユーザに情報提供やサービス提供の手段を配信することが可能とする。
【解決手段】コンピュータ上や携帯電話におけるメール送受信機能で稼動するHTML文書の送受信が可能かつ電子署名自動添付機能を有する電子メールシステムにおいて、テーブルゲームやクリックすることで様々な制御が出来るバナー広告などHTMLブラウザで実行可能な様々な配信プログラムを格納した配信プログラム管理手段を有することによる。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】コンピュータ上や携帯電話におけるメール送受信機能で稼動するHTML文書の送受信が可能かつ電子署名自動添付機能を有する電子メールシステムにおいて、電子メールユーザの電子署名作成に必要な氏名・住所・連絡先などを入力するユーザ個人情報入力手段と、テーブルゲームやクリックすることで様々な制御が出来るバナー広告などHTMLブラウザで実行可能な様々な配信プログラムを格納した配信プログラム管理手段とユーザ個人情報入力手段において入力された情報を基に配信プログラム管理手段に格納された配信プログラムを挿入した電子署名ファイルを作成する電子署名作成手段とを有し、電子署名作成手段で作成された電子署名を電子メールユーザが電子メールシステムに登録することで電子メールユーザが電子メールを送信するたびに電子署名作成手段で作成された電子署名が送信されることを利用し、電子メールユーザの配信プログラムを挿入した署名添付電子メールの送信数と電子メール受信者が受信した電子メール中の配信プログラムを利用した数をカウントする送信・利用数カウント手段と、電子メール受信者が受信した電子メール中の配信プログラムを利用した場合の制御を行う配信プログラム制御手段を有することにより電子メール受信者に様々なサービスを提供できることを特徴とする電子メール署名を用いたプログラム配信システム。

広告を入れる「システム」が請求項であること

最初の請求項は、電子署名時同添付機能を有する電子メイルシステムにおいて広告掲載料清算手段を有することを特徴としているわけだ。つまり、これはメール送信者、受信者、広告依頼主という三種類の登場人物がいることが大前提であり、送信者が不特定多数の広告依頼主から広告掲載料を得る為に自分のメールアドレスの署名部分を間貸しすると言う訳だ。その際の広告掲載料算出手段や清算手段を持っていないといけないわけだが、自分のメールの署名に自分で書くことがこれに該当するとは思えない。
二番目の請求項でも送信・利用数カウント手段を有すると言うこととなっている。これも自分のメールの署名に自分で書くことが該当するとは思えない。

HTMLメールであること

今どき、ビジネスシーンでHTMLメールを使う奴なんざ非常識極まりない奴(と私は思っている)なので、私の知り合いにはいない。時々うちの会社の人もHTMLメールをおくっている人がいるが、そういう人達は警告しても気づいていない人達なのでスルーしとこう。私と仲がいい人達でもないし。

そして何より未請求であること

特許とはその出願から1年6ヶ月が経過した時点で公知とされ、出願から3年以内に審査請求を行わなければならないとされている。今回、このように引用ができたのは出願から1年6ヶ月以上が経過しているからこそである。それぞれ出願日は「平成12年12月6日(2000.12.6)」と「平成13年1月18日(2001.1.18)」である。では審査請求は行われているか?と言うとどちらも「未請求」となっている。つまりだ、これは公知の事実でありもはや特許でも何でもないってことなのではないですか?
ってことで、今回の騒動、苫米地英人さんの勇み足と言えるんではないか?と言うのが私の見解である。